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GPUの性能を使ってCPUの処理を手助けする「GPGPU」機能。対応ソフトもいろいろと登場しており、いよいよ本格的に使えるレベルに達しつつある。GPGPUの基本的な知識を押さえ、実際にどの程度効果があるのかを検証してみよう。
「GPGPU」(General Purpose computing on GPU)とは、GPUをグラフィックス描画以外の演算処理に利用する技術のこと。本来、CPUが処理するデータの一部をGPUが受け持つことでCPUの負荷を軽減し、パフォーマンスの向上を図る。GPUの特性として、単純なデータを大量に扱う能力に優れる半面、複雑な計算を伴う処理には向かない。そのため、GPGPUでできる処理は、今のところある程度限られている。ATIとNVIDIAは、GPGPUの機能を開発する環境をユーザーに提供しており、ATIは「Stream」、NVIDIAは「CUDA」と呼ぶ。これらの環境で作成したプログラムなら、GPUを利用して物理演算処理や動画エンコード、3Dグラフィックスのレンダリングなどができる。また、DirectX 11では両社のGPUで利用可能なDirect ComputeというGPGPU環境が用意されており、今後の普及が見込まれる。
GPGPUを使うにはGPUが対応している必要がある。ATIはRadeon HD 4300以降。NVIDIAはGeForce 8400 GS以降で、256MB以上のビデオメモリを搭載した製品が対応している。ソフト側の対応も必要で、最近では対応をうたう製品が多く登場している。主なソフトを下にまとめた。動画のエンコードや画像処理に関するソフトが多い。NVIDIAは、ゲームの映像を立体にする「3D Vision」にも、GPGPUの機能を使っている。
CyberLink
MediaShow Espresso 5.5
シンプルな動画エンコードソフト。エンコードの設定を詳細に選択できるほか、簡単にiPodや携帯ゲーム機での視聴に適したファイルサイズや形式などに変換できる。このソフトでStreamを使う場合は、ATIの「Avivo Video Converter」をインストールしておく必要がある
CyberLink
PowerDirector 8
CUDA、Stream双方に対応している、動画のオーサリングソフト。数クリックするだけで簡単に動画編集ができる「マジックツール」など、便利な機能を多数搭載している。「3GPP2」形式での出力や、AVCHD形式でのSDメモリーカードへの出力などにも対応している
GPGPU機能を使うと、動画のエンコードに要する時間をどの程度短縮できるのか、ハイエンドクラスとエントリークラスのCPU2種と7枚のビデオカードで試してみた。エンコードに使用したソースファイルは、AVCHDビデオカメラで撮影したH.264形式の動画(解像度1,920×1,080ドット、bitレート17Mbps、再生時間は約3分)。これを、解像度はそのままで、bitレートを1.5Mbpsに変換するのにかかった時間を計測した。使用したソフトはPowerDirector 8。GPGPUのON/OFFは、ソフト側で設定した。また、今回はCPUの性能の違いによる影響も調べるため、Core i7-870とPentium G6950、2種類のCPUを使って検証している。
まず、全体を見て言えるのは、GPGPUを使用した場合と、CPU単体でエンコードを行なった場合では、前者のほうが実に約3倍も早いということだ。GPGPUによる高速化の効果は非常に大きいと言えるだろう。
気になるGPUのグレードによる性能差だが、今回の検証ではGPGPUさえ使用していればグレードによる影響はさほど大きくなかった(最大でも20%前後)。これは2世代前のGeForce 8800 GTを含めても変わらない。
また、注目したいのが、CPU性能の影響だ。同じビデオカードを使用した場合でも、Core i7-870とPentium G6950では、エンコード速度に2倍近い差が生じるケースもある。少なくとも今回の環境下では、GPGPUによるエンコード速度はCPUの性能にもかなり左右されていることが分かる。
ただ、ATIとNVIDIAでは、その影響の度合いが異なっている。ATIは比較的CPUの性能に左右されにくい代わりに、高速なCPUを使うことによる恩恵は小さい。一方、NVIDIAは積極的にCPUのリソースを活かしている半面、CPUの性能が低い場合はその真価を発揮し切れてないという構図になっている。
エンコード前と後で、画質の劣化を調べた。画面キャプチャを見ると、Streamのほうがキレイに見える。だが、実際の動画では、CUDAのほうが映像の質はよい印象だった。Streamは、樹木を遠距離から撮影したシーンでは、多く茂る葉がブロックノイズのかたまりのようになってしまい、カメラを動かすたびにチラつく。CUDAでは、それらがぐっと緩和されていた。
ビデオカードはMSIのN480GTXM2D15(GTX480)を使用。標識の黒色で塗られたトラックの絵の輪郭がにじんでいた。後ろ側の標識に落ちる影も、ブロックノイズが現われてギザギザになったが、映像を見るとこちらのほうが美しい
ビデオカードはMSIのR5870Lightning(HD5870)を使用。CUDAと同様に、黒色のにじみが見られる。ただ、後ろの標識に移る影の輪郭は、CUDAよりはっきりしている
【検証環境】CPU:Intel Core i7-870(2.933GHz)、Pentium G6950(2.8GHz)、マザーボード:GIGABYTE GA-P55A-UD3R(rev.1.0)(Intel P55)、メモリ:Corsair Memory CMX8GX3M4A1600C9(PC3-12800 DDR3 SDRAM 2GB×4、※2枚使用)、HDD:Western Digital WD Caviar Black WD1001FALS(Serial ATA 2.5、7,200rpm、1TB)、電源:Corsair Memory HX850W(850W)、OS:Windows 7 Ultimate 64bit版
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